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家賃減額交渉前に知っておきたい事!!

2020.08.01

お世話になります。税理士の山方です。

コロナ禍の経済状況悪化を受け、家賃の減額交渉が激化しているニュースをよく耳にします。その対応策として、2020年7月14日より『家賃支援給付金制度』の受付が開始されました。

こちらは、テナントの借手側が家賃について支援を受ける事ができる制度です。ありがたい制度ではありますが、給付には要件もありますし、給付内容は、基本的に家賃の3分の2を6カ月分補償するものに留まっています。

今後も家賃の減額交渉といった頭の痛い問題は継続しそうです。

 今回は、貸し手側である不動産オーナーが臨時的に家賃減額に応じた場合、不動産オーナーの税金への影響及びその対策についてお話します。

 


1. 法人オーナーが臨時的家賃減額に応じた場合、税金への影響は?(法人オーナー原則編)

突然ですが問題です。

【問題】

月額100万円のテナント家賃収入を得ている法人オーナーがいます。

この度、借り手側の都合により、3カ月だけ家賃を半額の50万円にして欲しいとの打診があり、その要請を受諾しました。

この場合、家賃減額に応じた法人オーナーの税金はいくら減額されるでしょう?

≪法人(実行)税率:25%、資本金:500万円、通常の所得:1,000万円、通常の税額:250万円(=1,000万円×25%)≫

【回答】

約1.6万円減額される。(納税額:約248.4万円)

 

普通に考えれば、50万円×3か月×税率25%=37.5万円税金が安くなるはず。納税額は、(通常の所得1,000万円-50万円×3か月)×税率25%=212.5万円になるはず。

収入150万円も減っているのに、税金が全然減っていない!おかしい!

当然の疑問です。その点について、ご説明します。

 

ポイントは、次の2点です。

①法人の行う臨時的家賃の減額は寄付金として扱われること

②法人が支出した寄付金は、税法上厳しい制限が設けられている事

 

まずはポイント①についてです。

 法人税法においては、臨時的な家賃減額があった場合、まずオーナー側は家賃の満額(契約額)を受け取り、その後家賃減額分を借り手に寄付したと考えます。

 上記の例ですと、オーナーは借り手より月額100万円を受け取った後に、借り手に対して50万円を寄付したと捉え、3か月合計で150万円を借り手に寄付したと扱います。

 

次にポイント②についてです。

 法人は利益追求団体である事が前提です。寄付金は一般的な経費と違い、売上(利益)に貢献しない支出です。そのため法人税法上、寄付金は一定額までしか経費計上を認めないという制限が設けられており、一般的な経費とは区別されます。

 上記の例ですと、法人は150万円の寄付金を支出したと考えますが、税務上の経費として認められるのは、約6.5万円のみと言う事になります。

  人助けと思っての家賃減額の受け入れは、税務上思わぬ落とし穴がありますので注意が必要です。

 

≪参考:寄付金損金算入限度額算式≫

損金算入限度額=(資本金の額×2.5/1,000+通常の所得金額×2.5/100)×1/4

(国や公益法人、特定のNPO法人への寄付金は別規定があります。)

 

2.  条件を満たせば臨時的家賃減額も寄付金扱いにならない!(法人オーナー特例編)

 コロナ禍における家賃の減額については、国税庁も柔軟な対応を見せており、次の条件を満たせば、寄付金として取り扱わない旨を公表しています。
 つまり条件を満たせば、上記1の例でも150万円の収入減に見合った税額37.5万円分の税金が減少することになります。

【条件】

①取引先等において、新型コロナウィルス感染症に関連して収入が減少し、事業継続が困難となった事、または困難となる恐れがあること

②貴社が行う賃料の減額が、取引先等の復旧支援(営業継続や雇用確保など)を目的としてものであり、その事が書面により確認できること

③賃料の減額が、取引先等において被害が生じた後、相当の期間(通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間を言います。)内に行われたものであること

 

特に②において書面での確認を要請していますので、先方からの「家賃減額申請書」等で、先方の売上の減少や賃料の減額期間を確認できるよう準備が必要です。

 

 ≪関連リンク≫国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/faq/05.htm#q5-4

 

3. 個人オーナーが家賃減額に応じた場合は?

今までお話したのは、あくまでもオーナー側(貸し手側)が法人の場合です。

オーナーが個人の場合は、寄付金といった問題は生じません。

100万円家賃を受け取れば、家賃収入100万円を計上しますし、50万円家賃を受け取れば、家賃収入を50万円計上するだけです。

オーナー側には、家賃減額による税務上の不都合が生じることはありません。

 

終わりに

 今回のコロナ騒動に関しては、私自身も予想していませんでした。

 日々の情勢を観察しながら、状況に対応しているのが現状です。

 こんな時こそお互いの立場を理解し、思いやりを持ち、冷静に対処して行ければと考えています。

 

参考 家賃支援給付金制度の概要

≪参考リンク≫経済産業省

https://www.meti.go.jp/covid-19/yachin-kyufu/index.html

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筆者紹介

山方越志税理士事務所 
山方越志

初めまして。税理士の山方と申します。
私は、これまで相続税の申告に50件近く携わらせ頂いてます。 相続対策も含めますと少なくとも100件以上にはなるかと思います。これは、税理士としても相当な案件数と自負しているところです。
相続実務においては、相続税の知識はもちろんの事、周辺税法・民法・社会保険料及び不動産といった様々な知識からの多角的な検討が必要となります。
その中でも、とりわけ重要なのはご家族皆さんのお気持ちの部分だと、仕事のたびいつも痛感させられます。

節税のアドバイスは当然のこととして、何よりも「その人の大切な物が大切な人に引き継がれていくことのお手伝い」をモットーに業務に携わらせて頂いております。

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